氷はやはり芸術だ
とは言えLake Champlainはまだまだ冷たく氷がもう少しと頑張っています。
Spring is just around the corner. Right after that, Spring has come!!
とは言えLake Champlainはまだまだ冷たく氷がもう少しと頑張っています。
Spring is just around the corner. Right after that, Spring has come!!
Happy Winter Solstice :冬真っ盛りという感じです。昨年、サイトを更新した際に対談記事やトピックスなどを削除しました。その中から、厳選し、推敲して記事としてUpしたいと考えています。但し、このサイトではなく、奥伊勢BSCという名称のサイトに計画中のOnline Journalへの投稿記事としてUpさせようと企んでおります。本年も宜しくお願い申し上げます。
“ローラおばさんと踊る”
原題(Original title):DANCING WITH AUNT LOLA
著者(Author):Prof/Dr. Jürgen Kleist<http://jurgenkleist.com/>
—そのときまた電話がなり始めた。
その4
ボク達は互いに見詰め合った。シモーヌは取り乱したようだった。ボクは柔らかな恐怖の目つきをした。
機械音がカチッと入った。また、ローラおばさんだった。
「分かっているのよ、そこにいるのは、カートちゃん」おばさんは陽のさす5月の朝の小鳥のような鳴き声で言った。
「私には今あなたがそこにいるのが見えるの。何と愛おしい少年だこと。今は立派な男性になっているのよね。女の子たちは間違いなくあなたに恋するわよ、私のカサノバ(女たらし)ちゃん。電話を取って年老いたローラおばさんに挨拶してよ。私、病気なの、ひどい状態よ。聞いている?ひどいのよ」 声が落ちてすすり泣き始めた。
シモーヌがゆっくりとボクを押し出した後、受話器を取った。「ローラおばさん、聞いています?」
「聞いているわよ、カート。ねー、前にも電話したのよ。あなたと話をしたいの。私のいるLAに来て欲しいの、分かる? お医者はね、余命3-4か月と言うの。分かる? 3、4か月よ。お医者は多分3か月だろうと言うの。でも、誰がそんなこと分かるというのよね。ゴールドシュタインという先生で、良いお医者よ。この分野でのエキスパートで信頼できるわよ。国際的にも評判が良いの。でもね、お金がかかるのよ、とても。もう少し長生きすると破産してしまいそう。1時間診て貰って450ドルするの。『貧乏になる前に死んだ方ましだわ』なんてお医者に言うの。お医者はね、肩をすくめるだけ。信じられる?」おばさんは声高に言った。
「ローラおばさん!待って、待って!」ボクはおばさんを落ち着かせなければならなかった。
「待って、おばさん。死にはしないよ」ボクはできるだけ静かに言った。「死にはしませんよ」
「でもね、カート、今死なないと高くつくのよ。450ドル取る今日いまどきのお医者はハゲワシの様なものよ。バンパイアで、ハイエナで、ヒルよ」
「ローラおばさん、聞いて」 ボクは叫んだ。「別のお医者に診て貰って、第2の意見を貰った方がいいよ。何事にも確実と言うことはないから」
「愛しのカートちゃん」彼女は柔らかく3歳の子供に語りかけるように言った。
「これね、既に第2の診たてなの。本当のことを言うと、5番目なの。あらまー、最初のお医者の言うことを訊いていれば、とても節約できたのに」
ボクは深く息をした。シモーヌは扉のところで黒の衣装で立っていた。ボクは相変わらず裸で、震え始めていた。コニャックをもう一杯注いで一気に飲んだ。彼女は少し近くに来て、髪の毛の匂いがするようだ。もう一杯注いだ。
「ローラおばさん、ボクに何して欲しいですか?」
「分からないわ、カート」と言って、またすすり泣きだした。「私は人生の旅の最後に近づきつつあるの。最後の章が書かれている。三途の川を渡るところで、黄泉の世界が呼んでいるの」
「ローラおばさん」ボクは話をさえぎって「何も書かれてはいないよ。まだ、川を渡ってもいないよ」
おばさんは「あーそー」とため息をついて、少し間をおいた。
「あなたに会いたいの、ダーリン。もう一度。分かる?最後にもう一度。それから、二人でメキシコにドライブして、アカプルコかメリダか、サンクリストバルか。メキシコ、私の大好きなメキシコ。遺跡、トーチラス、マルガリータ、その全てが。それはナポリを見るようなの。あー、ナポリ、大好き」
おばさんの声はまたまた高まり始めた。
「かつて、ヘアドレッサーとそこに飛んだことがあったのよ。博物館、石棺の裏側。待って、待って、彼の名前はカルロ・ルイジ何とか。待って、分かった、カルロ・ルイジ・ベネヴィータ。そう、カルロ・ルイジ・ベネヴィータ。彼はとても素敵で、感覚的で、この世の女性は誰も彼をベッドからけり下ろしたりなんてできない。そういうことが起こったとしてもの話。仔牛のスカロッピーニのような赤み肉のようにとても味があって。彼はナポリの全てを見せてくれて、私も幾つか見せたわよ」
「そうでしょうね、ローラおばさん」ボクはコニャックをもう少し飲んだ。
「でもね、ナポリには戻りたくないの。この頃はとても人が多くて、ベスビアス火山が再び噴火するという話をしているし、とても危険よ。私はメキシコに行きたいの。そして大きなピラミッドを全てもう一度見たい。パレンケよ。パレンケに行ったことある? ジャングルの真っただ中にあって、なのに、とてもゴージャスよ」
シモーヌは突然ため息をついて、大きな目でボクを見た。
「誰なの?」ローラおばさんは訝った。
「シモーヌだよ」ボクは細身の体に柔らかな絹をまとっているシモーヌを見た。
「誰なの?」
「友達だよ、おばさん」
「エリカとはどうなったの。それとも、お前が狂っていたヒーサーという女(ひと)なの?」
その5に続く
“ローラおばさんと踊る”
原題(Original title):DANCING WITH AUNT LOLA
著者(Author):Prof/Dr. Jürgen Kleist<http://jurgenkleist.com/>
「よくは知らないけど、変だね」
その3
ボクはシモーヌの方に足を踏みだし、目を見た。ボク達は未だ服を着ていなかった。 だから、未だ望みを捨てていなかった。
でも、シモーヌはボクの目を避けていた。
彼女はというと、もうローラおばさんの電話のことに関心が移っているようだった。 「おばさんは、あなたに会いに来て欲しくて何か言っていたわよ、違う?」
ボクは少しうなずいた。
「シモーヌ、君はとても綺麗だよ」ボクは暗い声色で話を変えようと試みた。 シモーヌはそれには興味を示さなかった。
「何かの前にもう一度あなたに会いたい、と。」
「神に召される前に・・・とか」ボクは間を置いて言った。それから、もう一度「君の髪は黄金の野原のように輝いている」と言ってみた。
あれー、ボク本当にそう言った? もう少しましなこと思えなかったかな。ボクそんなに絶望的だったかな?
3週間以上もの間、ギラギラの目つき、夜遅くの電話、ワインと彼女の言葉に酔ってそしてボクの脳に、心に無意識下に沈みこむデリケートな顔に酔って作った三つの詩。その一方で、彼女はここにいて、天使の夢と眠れない夜に書いたおとぎ話に出てくる妖精だった。ボクは目を閉じて、二人が寝室にいるところを想像した。
シャンペン、エドシックはグラスの中で泡を出し、蜜の香りのロウソクがメッセージを送っていた。
「トイレ、使ってもいい?」シモーヌは少し急いだ感じでボクを見て言った。
「勿論、どうぞ」ボクはやさしく答えた。「勿論、勿論」
今日はなぜ神は僕に罰を与えられるのか。このときに、この瞬間に、神の無慈悲を受けるのか。惑うことなく、今からすぐにでも行儀よくするし、神の恩名の下に子羊をささげます。でなければ、少なくともスーパーマーケットで肉を買って土曜日に料理してワインを飲みます。
ボクは真実を語ることを約束し、真実以外の何ごとも言いません—その代わりにこの素敵な女性を愛させてください。
「私・・・本当に電話しておかないと」 シモーヌは目を天井に向けて言った。
ボクは、「あー、ごめん」と心底そう思った。
「すぐに戻るから、どこかにいっては駄目よ」とシモーヌは囁いて、ボクの心臓が踊り始めるようなキスを投げかけた。
「ありがとう。とても」ボクは上の空で言った。 「何?」シモーヌはボクを見て訝った。
「何も、何も、ベッドで・・・」 ボクが言葉を発する前に、シモーヌは扉を閉めた。
ボクはローラおばさんの留守録を巻き戻し、コニャックを飲んだ。疑いもなく、おばさんは助けがいるか、少なくとも慰めの言葉が必要であった。ボクは時計を見た。電話をかけて、病気のことや、ボクに何をしてほしいかなどをチャンとするのに遅い時間ではなかった。
ボクはダイヤルし始めたが、途中で受話器を置いた。ダメだ。おばさんが何と言おうとシモーヌとの夕べは台無しになるだろう。シモーヌはバスルームでボクを待っている。ゴールは目の前だ。
おばさんには待ってもらわないと。ボクはバスルームの扉が開くのを聞いて振り向いた。シモーヌは夢のような黒の絹衣をまとってボクの方にやって来た。
ボクはもう一度コニャックをなめ、現実のことなのか、と自問した。
「準備できてる?」とシモーヌは髪を後ろにやって言った。彼女の眼はボクの体を上に下に訝しげに見た。
「そー、ボクは、ボクは・・・」腕をシモーヌの方に回した。匂いがボクを誘い、酔わせた。ボクはこの束の間のやさしい今夜を神に感謝した。彼女の眼を探し、目を見つめていると、暗い穴に落ちていきそうで、頭が回り始めた。ボクは何かロマンティックなことを言おうと思って結局「あー、シモーヌ、何といえばいいのか」と囁いた。それからお互いにキスをした。ボクの腕は別個の命を持つように動き始め、彼女の体をボクの体に強く押し付けるのを感じた。—そのときまた電話がなり始めた。
その4に続く