“ローラおばさんと踊る”
原題(Original title):DANCING WITH AUNT LOLA
著者(Author):Prof/Dr. Jürgen Kleist
http://jurgenkleist.com/
Amazon.co.jpから原本を購入可能で、以下はその内容紹介:
A collection of short stories, ranging from a meeting between the young Mozart and
the Magic Healer Franz Anton Mesmer in “the Magic Theater” to “Dancing with Aunt Lola”,
a phantastic story situated in a mental hospital.
This is the Japanese-translated version divided into several parts under the author’s permission.
その1
ロサンジェルス(LA)にいるローラおばさんから電話があったとき、ボクは新しい恋人のシモーヌとお風呂にはいっていた。彼女のきれいな背中を泡立てて、10回程さすったときだった。ボクは電話に気付かないふりをした・・・が、シモーヌは振り向いてボクを見つめた。ボクは肩をすくめて「間に合わないな」と言って、電話が自動応答に切り替わるのを待った。その後、ボクらは黙って座って、ローラおばさんの低い声に聴き入った。
「ねー、私病気なの。お医者たちに、この先そんなに長くないと言われているの」
長い沈黙の間中ローラおばさんは、すすり泣いていてハンカチを使っている様子だった。ボクらは身を乗り出して次の言葉を待った。
ローラおばさんは、続けて「カート、こっちに来て欲しいの。もう一度、顔を見せてよ。私メキシコに行きたいの」 また、沈黙とすすり泣き、「私が・・・神に召される前に」 そして電話は切れた。シモーヌは幾分とまどった眼差しでボクを見つめていた。
ボクは「ローラおばさんが何のことを言っているのか全く分からない」となるべく罪のないトーンで言ってみた。
「おばさんは、絶対にあなたの助けが必要よ」シモーヌは浴槽に熱いお湯を入れながら言った。彼女は、湯船の中で背中をボクの胸にあずけながら「寒くなってきたわ」と言った。ボクは腕を回して強く彼女を抱いた。シャンペンは氷で冷やしてあった。
「フランスのシャンペン、エドシック(注:有名ブランドの一つ)だよ」と彼女の耳に囁いた。
「おばさんはあなたが必要よ。泣いていたわ」シモーヌは上体を起こして言った。
「大変じゃないの」 ボクは返事に窮した。
シモーヌとはふざけあったりしながら、家に誘ったりし続けて、3週間半かかってやっとここまで来たというのに。
ボクは冷えたシャンペンのこと、ロマンティックなチェロコンチェルトの新しいCD、ステレオにかけられるそのCDのことを想った。
寝室にある花の蜜の香りのロウソクのことを想い、そして僅かに前にかがんでシモーヌのきれいな背、肩、髪の毛の匂いを嗅いだ。
ボクは手で水をすくって彼女の背中をぬらしながら言った。「思うに、おばさんは、直ぐには死にはしないよ」
「よくもそんなことが言えるわね。残酷な」シモーヌの声は不機嫌だった。彼女は突然立ち上がって浴槽から出た。ボクは彼女の優美な体を見た。
あ~あ、ローラおばさん、もう2、3時間待ってくれていたら~。
その2に続く