The Messages from Highly Effective Researchers/Scientists

物故された先生方から頂いた、今でも心に残るメッセージについて記憶をたどって列挙しました。

恩師の方々:カッコ内は松尾が教えを受けた時期。

★石黒伊三雄(1962年から、断続的に)

Key Word:ビオプテリン/ビタミンB2/フラビン/ロイヤルゼリー

藤田保健衛生大学(2018年10月より藤田医科大学)第一生化学教室は1974年に石黒伊三雄教授によって開講された。

真の教育は私学にあり。教育とは何年も後で分かること。そのときに分かることは単なる気付きだ。

★堀尾武一(1964年~2003年逝去されるまで)

http://www.protein.osaka-u.ac.jp/about/history

大阪大学蛋白質研究所歴代所長を参照

次回はこの先生の語録に特化したいと思います。

★Mark Bitensky(1975年~1977年@Yale Univ. 2014年逝去)

Key Word:Cyclic nucleotide/Light-activated GTPase/Retina(Retinal)

Be Skeptical Discussion& Argument Make typical example

Negative Dataが大嫌いで、Technicianが捏造したくなるのがよくわかる。

全てにおいて反面教師で、大変勉強になりました。

★Gordon H. Sato(1981年~2017年逝去されるまで断続的に)

Key Word: Cell biology/Monoclonal antibody/Manzanar project

Good business based on good research.

More money and freedom to young researcher.

日系二世の根性の塊がDriving Forceになっている。

恩師 堀尾武一先生のこと《ご逝去まじか》

あれから16年たちました。忙中閑ありではありませんが、先生の語録を紹介したいと思います。その前にまず、お亡くなりになられる直前の思い出を、と思います。

—–先生は、2002年10月17日に「一哲会」(12年ぶり開催の同門会)にお元気で出席されました.その会の冒頭でのご挨拶.「弟子百数十人の中で鬼籍入りの方は二人,お一人は何とも仕様が無かったが,もう一人はその兆候があった.僕にもう少し医学的知識があれば救えていたのに,と悔やまれます.皆さん,僕よりも早く死ぬというような親不孝をしないように元気で頑張って下さい」.上海にあるFudan大学・Huang教授もOYCとの関係で来日しておられ幸運にも堀尾先生と旧交を温められました.会の最後に松尾が「堀尾先生はお見かけした通りお元気で,先生より長生きするにはそれなりの覚悟と遺伝的資質が必須ではないかと思います」と挨拶したのを覚えています.

奥様からお伺いしたことを要約します.

  • 12月初めにスキーに行かれ,その後で背中に痛みを訴えられ(八高時代の野球で痛めたせいかな?スキーかな?).
  • 少しきついので娘さん(内科医)が勤務しておられる病院で精密検査され,肺癌であることが判明.
  • 放射線治療,イレッサなど試みたが,効果は全く無く,2週間余りで癌はさらに大きくなり,身辺整理をされる間も殆ど無く1月中旬に入院.
  • 2月15日に奥様から「松尾さんに会いたがっています」との電話で状況を知った.
  • 2月19日にお見舞いに行った折には余りのお変わりようで驚愕し,また先生が覚悟をしておられることも察せられました.

以下先生との会話です(終始手を握らせて頂いての会話でした).

  • 堀尾「松尾さん,アメリカから帰ってきて良かったナー.OYCに入って良かったネー」
  • 松尾「ありがとうございます.先生の遺産があってお陰さまでBIOも何とか格好ついています」
  • 堀尾「僕にはアワンかったけど,松尾さんにはヨーオータ会社で,OYCに入ってよかったネー.内藤さんともエーコンビやで」
  • 松尾「そうです.Chemistryが合っています」
  • 堀尾「僕は本間さんとはイチイチアワンかったし,何で,あんなにゴルフのスコア―を気にしはるのかナー.僕はヒトを恨んだりはせんけど...内藤さんに頼んで早く長浜に戻してもらい.長いこと奥さんと離れていたらシンドイデ」

(この間「ティッシュ買ってきて」というエピソードがありました)

  • 堀尾「モウ来んでエーデ.来る必要ないデ.そやけど,僕みたいな癖の強いモンと長いこと付き合ってくれたナー.アリガトウ」

治療を拒否され死を覚悟しておられることが分かり,改めて手を握り締めて涙しました.

病室を去る折りに「また来ます」と言ったらいつものように右手を斜め上に上げて挨拶されました.生気の無くなったご自分の手を暫く見つめておられたのが印象的でした.結局,チャンとお話できたのはこのときが最後でした.その後,ホスピスに移られモルヒネを背中と肩から除放注入され,栄養補給を徐々に減らす衰弱死という方針とのことでした.ご本人の精神状態を考えての方策とのこと.病室は独特の臭い(いわゆる死臭)で長くて10日か,早ければ1週間と思いました.(3月15日のことだったと記憶しています.その折,ヤトロン内藤社長が来られたときのお話を伺いました)

気を許せる弟子が少なかったせいか,松尾と角野さん(最後まで助教授をされた方で,現MS機器常務)しか,早くに知らせてもらえませんでしたが,奥様を説得してお許しを頂き,数人の弟子がご存命中にお会いすることが出来ました.

前年の11月20日のOYC顧問会でもお酒を酌み交わされてお元気でした.珍しく咳をしておられ,あれっ(??)と思いましたが,まさかこんなことになるとは.恩師の生き様,死に様は「堀尾先生は精神的な支え」であっただけにショックは隠せませんが,これを機に自分の行き方をよくよく考えようと思っております.

—–生き様、死にざまをいくら考えても何の展開もないまま16年たってしまいました。昨年秋には一哲会解散会がありました。個人的には、心の整理には全く役にも立っておらず。やりきれない気持ちで語録集をアップすることを思い立ちました。思い違いを指摘されるのを覚悟ですが、ありましたらご容赦ください。松尾 拝(2019年5月20日)

Regulatory Science No.2

分かりやすい例として《量(の概念)》を挙げたいと思います。これは、サプリメントや健康食品や機能性食材などという言葉と製品が市場に溢れている昨今の食生活において、専門家でない一般の方々に浸透させなければならない重要なモノの考え方です。

量(Amount)とは濃度と総量です。医薬品は特定の範囲内の量で薬効を期待することができ、それを大幅に超えると副作用が強くなり、毒物となります。つまり、あるモノがヒトに対して将来起こしうるリスクを科学的に調べその根拠を明示する科学—Regulatory Science—が根底を成しています。

体に良い、健康維持に意味があるというあるモノに対して、量のことを考えると、どのような判断をすればよいかわかってきます。謳い文句のように「効く」のであれば、量多くとると、よりよく効くかもしれませんが、弊害(健康被害)が発生することになります。

この自然界にヒトに健康被害を起こさないモノは存在しません。水も酸素も、そうなのです。→No.3に続く