weblog:先制医療と食(2)

動機づけの話です。ライフスタイルの変容(例:食習慣などを変える)は、そんなに簡単ではありません。例えば、肥満傾向の人に喫煙での心筋梗塞を予防するために禁煙を勧めても喫煙者の全員が心筋梗塞を起こすわけではないので、治療者側には迫力はなく、患者は患者で自分を適用外において、つまり「自分には鉄砲の弾は当たらない」と思い込み、禁煙しません。自分のデータが反映されているのかどうか分からない多くの人に、危険因子を避けて先制的に疾患を予防しようとする動機づけをするのは容易なことではありません。その人の(個々人ごとの)データで、その人ごとに何らかの〝褒賞〟が必要となります。などなど考えていると、先制医療による医療費の抑制と言う経済効果は本当にあるのかな、などと気になっています。勿論、医科学の進歩になることは間違いありません。

weblog:先制医療と食(1)

目下、雑誌「臨床化学」の特集号で「先制医療実現に必要なバイオリソース/データバンク:夢の実現に向けて」の原稿に取組んでいます。一言で云えば、どのような先制診断を行い、どのような対策(治療)を取るか、そしてそれをどのような方法で検証/確立するか、が課題です。バイオマーカーと疫学的調査情報が重要ですが、日本には健常人のコホート研究のできるバイオバンクはありません(疾患のバイオバンクはあります)。病気と関係する何かを見つけても、それがその病気に特異的なことなのかどうかを健常者と比較できなければ、使い物にはなりません。話題のマイクロRNAによる癌診断も同じことです。一昔前は、早く診断できても、治療方法が同調して進展していなければ「あなたは体のどこかに癌があります」と言われて、余計な苦労をしょい込むことになるだけです。癌に関しては、幸い早期診断で早期治療することができるようになりつつあります。他にも気になる病気があります。糖尿病、ウツ病、認知機能低下症(典型例はアルツハイマー)などはどうでしょうか。どうやら、医食同源の病気と、早期治療介入の必要な病気の二つに分かれそうです。前者の方で気になることがあります。恐らく数年後には「食習慣は極めて重要因子」になるので、食べることに今よりも神経を使わなければならなくなるでしょう。身体に良いモノを追求する(悪いものを排除する)傾向が強くなります。これはこれでとても危険で「あれはよくない、これは身体に良くない、これはどうだ」などという生活をしているとストレス死してしまうでしょう。「体に悪いと分かっていることが一つくらいあっても良い」という生き方も大事です。先制医療が進むと「その人の人生観」を基盤とするライフスタイルが鍵となってきます。(動機づけに続く)

weblog 先制医療/診断と言うパラダイムシフト

先制医療(Preemptive Medicine)という言葉を耳にするようになって来ています。ゼロ/一次予防医療とほぼ同義で、イメージとしては「未病治療」です。但し、先制診断法(Preemptive diagnosis)という新たな診断法が確立されて初めて成立する仮想概念です。課題が幾つかあります。(1)どうやって診断するのか、(2)診断方法を提示されても、それを検証する場がありません。(3)対象となる疾患のどの時期が先制治療のターゲットなのか、(4)疾患ごとに違うにしても、「生活習慣病胎児期発症説」(Barker博士提唱のDOHaD説)を取り入れると卵子の栄養状態からその範囲に含まれます。とは言え個の医療と関係して医療科学分野でのパラダイムシフトの起爆となっています。健常状態からの生体サンプルとこれにタグ付けされた医療情報の歴年的蓄積が必要となって来ています。興味あるお方は一般社団法人健康科学リソースセンターhttp://www.rechs.org/ にアクセス下さい。